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「べに、もうやめて……私、べにを嫌いになりたくない……」
やっとの思いで紡いだ懇願に、胸許への愛撫がやむ。
苦しいほどに密着していた裸体がわずかながら離されたことに淡い期待を抱いたのも、つかの間であった。
「……なればいつ、愛して頂ける? わたしはいつまで待てばよろしいのか」
甘やかな睦言は一変。無機質で鋭利な返答が突きつけられる。
「親愛など要りませぬ。寵愛、ただそれのみがわたしは欲しい!」
「ぁあっ……!」
壊れ物を扱うような慈しみにあふれていた手が、細い手首をぎりぎりと締めつける。
痛いと叫びたい弱音を噛み殺すほどに、生理的な涙が大粒の琥珀からこぼれる。
褥を濡らす朝露は、紅へ朱の唇を噛みしめさせた。
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