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母性本能をくすぐりにくすぐられ、破顔した穂花は、両腕を目一杯伸ばす。
ぱぁ、と緑の瞳を輝かせた蒼がいざ飛び込まんというところで、襖が開き――
「失礼致します。食事の支度がととのいまし……穂花!? なりませぬ! そやつに不用意にふれては……!」
「へ?」
室内の光景を目の当たりにするなり、血相を変えた紅が声を張り上げるが、手遅れであった。
「ぎゅう」
「むぐっ……!」
華奢な腕がもたらすは、唐突な息苦しさ。例えるならそう、蛇に首を締め上げられているかのような。
そういえば、蒼は蛇に良く似た妖だったっけ……とどこか遠くのように感じるうちに、酸素が底を尽く。
やがて、糸の途切れたからくり人形のごとく、穂花の意識は暗転した。
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