*18*一迅の刃

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  *  *  * 「ちょっと紅さん」 「はい」 「私の大好物知ってます?」 「あんかけ揚げだし豆腐ですな。すりおろし生姜を忘れずに」 「お茄子もつけるとか天才ですか。味が沁みてる……はぁあ……しあわせ~……!」  うららかな陽気の射し込む居間にて。  穂花の大好物である揚げだし豆腐を筆頭に、食卓にはアジの混ぜご飯、青菜と百合根の卵とじ、麹の味噌汁と、まばゆい朝食が並べられていた。  さすが紅といったところか。その腕たるや、高級料亭の料理人にも引けをとらない。 「ねーさま、にこにこ」 「ホント美味しいよ! 蒼も食べてみて!」 「あおはね、たべられないの」 「食べられない……どうして!?」 「食事を必要としないのですよ。原動力として、わたしの神力を分け与えておりますゆえ」  言い方を変えるならば、紅の神力が、蒼の食事ということだろうか。 「そっか……こんなに美味しいのに、なんか勿体ないね」  言葉を交わせても、所詮はちがう種族なのだと。  当たり前の習慣を共有できない物寂しさが、箸を遠のかせる。  
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