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「ちょっと紅さん」
「はい」
「私の大好物知ってます?」
「あんかけ揚げだし豆腐ですな。すりおろし生姜を忘れずに」
「お茄子もつけるとか天才ですか。味が沁みてる……はぁあ……しあわせ~……!」
うららかな陽気の射し込む居間にて。
穂花の大好物である揚げだし豆腐を筆頭に、食卓にはアジの混ぜご飯、青菜と百合根の卵とじ、麹の味噌汁と、まばゆい朝食が並べられていた。
さすが紅といったところか。その腕たるや、高級料亭の料理人にも引けをとらない。
「ねーさま、にこにこ」
「ホント美味しいよ! 蒼も食べてみて!」
「あおはね、たべられないの」
「食べられない……どうして!?」
「食事を必要としないのですよ。原動力として、わたしの神力を分け与えておりますゆえ」
言い方を変えるならば、紅の神力が、蒼の食事ということだろうか。
「そっか……こんなに美味しいのに、なんか勿体ないね」
言葉を交わせても、所詮はちがう種族なのだと。
当たり前の習慣を共有できない物寂しさが、箸を遠のかせる。
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