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「空腹を憶え、美味と感じるうちは、喜ばしいことではないでしょうか」
かたわらでそっと急須を傾ける紅の、異様なほど静かな草笛が、にわかに異変を伝える。
「確信致しました。――誓約は、まだ続いております」
「なんですって……!」
「貴女様が、こうして変わらず食事をされている。それが証です」
コト……と置かれた湯呑みの透き通った緑に、ゆらめく己が映り込んでいる。困惑の面持ちで。
「永久を司るわたしは、老いや飢えを知りません。味見程度に摂取することはできますが、そもそも食事の必要がないのです」
そうか……だからなのだ。
滅多に食事をしない、したとしてもすずめの涙ほどの量であった理由は、穂花の給仕のために先に済ませていたわけでも、紅が少食なわけでもなかった。
「このイワナガヒメとともに永久を得たのならば、貴女様がお食事をされているはずがない」
「だから誓約は続いてるって…………青い蕾があったのも、それで?」
「おそらく」
穂花の問いに、紅は別段驚くこともなく答えた。その存在を、とうの昔に知り得ていた証拠だ。
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