*18*一迅の刃

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「たしかに椿の……赤い花は咲きました。しかし、わたしと貴女様の神力は未だ同化していない。天が仕損じるとは到底思えませぬ。となれば、考えられることはひとつ――〝蕾を咲かせられるか否かの機会を、天は等しくお与えなさった〟」 「それって、つまり――」 「ぬしさま」  それまで大人しくなりゆきを見守っていた蒼が、唐突に声を張り上げた。  背筋を伸ばし、庭の方角へと眼を凝らしている。これまでの姿からは想像もつかないような、鋭利な常磐色をたぎらせて。 「きたよ。あお、また出る?」  主語がなくとも、紅はすべてを理解したらしい。 「……いや、そのままで良い」  なんのことだかわからない。が、なにか良からぬことが起きようとしていることだけは、わかった。  ざわめく鼓動。おもむろにまぶたを下ろした紅へ、声をかけようとしたそのときだ。  翠の絹髪を、一迅の風が舞い踊らせた。  
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