*18*一迅の刃

8/8
471人が本棚に入れています
本棚に追加
/479ページ
「――動くな。妙な真似をすれば、斬る」  ……鼓膜を凍りつかせるは、絶対零度の声音。  呆然と見つめる先で、白銀の刀身が鈍い光を放つ。 「この一晩で、さぞかしおめでたい夢を見ることができただろう」  聞き慣れた音色で、これほどまでに皮肉たらしい響きを、耳にしたことがない。  けれども視界へ映るのは、見慣れた飴色の髪。 「俺の穂花を返してもらおうか。――禍津神」  鋭い言霊、矛先を向けられて尚、紅は焦燥を滲ませはしない。 「……お待ちしておりました、オモイカネ殿」  まるで覚悟していたかのように、しかと紅玉で見返す、ただそれのみ。  
/479ページ

最初のコメントを投稿しよう!