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「――動くな。妙な真似をすれば、斬る」
……鼓膜を凍りつかせるは、絶対零度の声音。
呆然と見つめる先で、白銀の刀身が鈍い光を放つ。
「この一晩で、さぞかしおめでたい夢を見ることができただろう」
聞き慣れた音色で、これほどまでに皮肉たらしい響きを、耳にしたことがない。
けれども視界へ映るのは、見慣れた飴色の髪。
「俺の穂花を返してもらおうか。――禍津神」
鋭い言霊、矛先を向けられて尚、紅は焦燥を滲ませはしない。
「……お待ちしておりました、オモイカネ殿」
まるで覚悟していたかのように、しかと紅玉で見返す、ただそれのみ。
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