*19*桜に赦しを
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「まるで、牙の抜けた獅子だな。……馬鹿らしい」 毒気を抜かれたように嘆息をもらし、ふいと顔を背ける真知。 彼もようやく、いたずらに争うことの〝馬鹿らしさ〟に気づいたらしい。 「よかったね、紅。……しがみつける相手がいて」 サクヤの背に回された、紺青の袖。 そっとささやき、穂花はそのまぶしい光景を細く切りとった。 ――小袖の五月雨は、桜に包まれて。
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