*20*花よ咲け

2/11
471人が本棚に入れています
本棚に追加
/479ページ
 存外長い蛇のような舌は、目にも鮮やかな血色。それで、さながらはしゃいだ犬が飼い主にするかのごとく、穂花の頬を舐めているのだ。  人の姿をとった蒼は穂花と同じ年ごろ。華奢だが身体は男子のそれで、逃げる術がなければされるがままであるしかない。  状況が状況ながら羞恥を憶えないのは、蒼の幼い言動に感化された親愛が勝った為か。 「ふふ……蒼、くすぐったい」 「ねーさま、あったかいね。やわらかくて……あまくて、おいしい」 「いやぁそれほどでも……うん?」  うっかり相づちを打ちそうになったが、なにやら衝撃的な単語を発されなかっただろうか。 「これ蒼、穂花の神気をつまみ食いなど、はしたないぞ。腹を空かせているのならわたしに申せ」 「ごめんなさい! あおもうペコペコ~」 「えっ……えっ?」 「蒼は兄上の神気を取り込むことで、命を繋いできたのですよ」  すかさずサクヤの助け船がある。  そういえば紅が「蒼は世間一般的な食事を必要としない」と言っていた。なにがなにやらわからないが、どうやら命を繋ぐ為に〝食べられていた〟らしい。  
/479ページ

最初のコメントを投稿しよう!