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存外長い蛇のような舌は、目にも鮮やかな血色。それで、さながらはしゃいだ犬が飼い主にするかのごとく、穂花の頬を舐めているのだ。
人の姿をとった蒼は穂花と同じ年ごろ。華奢だが身体は男子のそれで、逃げる術がなければされるがままであるしかない。
状況が状況ながら羞恥を憶えないのは、蒼の幼い言動に感化された親愛が勝った為か。
「ふふ……蒼、くすぐったい」
「ねーさま、あったかいね。やわらかくて……あまくて、おいしい」
「いやぁそれほどでも……うん?」
うっかり相づちを打ちそうになったが、なにやら衝撃的な単語を発されなかっただろうか。
「これ蒼、穂花の神気をつまみ食いなど、はしたないぞ。腹を空かせているのならわたしに申せ」
「ごめんなさい! あおもうペコペコ~」
「えっ……えっ?」
「蒼は兄上の神気を取り込むことで、命を繋いできたのですよ」
すかさずサクヤの助け船がある。
そういえば紅が「蒼は世間一般的な食事を必要としない」と言っていた。なにがなにやらわからないが、どうやら命を繋ぐ為に〝食べられていた〟らしい。
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