470人が本棚に入れています
本棚に追加
「ぬしさま、あおがんばった! ごほうびちょうだい!」
「わかっておる。急くな、急くな」
やれやれ、と肩をすくめつつも、紅は畳の上で居ずまいを正す。
「蒼に〝食事〟をさせて参ります。……面を外します。わたしの神気にあてられてはなりませぬから、穂花はこちらでお待ちを」
なぜ紅の神気にふれてはいけないのか。愛する相手であるのに。
甚だ疑問に思えど、声にはできない。
ひそめられた草笛の音色、真剣な面持ちを前に、なにか思うことがあっての言葉とはかり知った為。
「うん、わかった。さくとお話してるね」
「では……穂花を頼んだぞ、サクヤ」
「承知いたしました。どうぞ、お任せを」
穂花、次いでサクヤを見やった紅は、ふわりと紅玉をほころばせる。
そうして蒼を連れ立ち、まぶしい陽光の中庭へと消えていった。
最初のコメントを投稿しよう!