*20*花よ咲け

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  *  *  *  静かな居間は、仄かな桜の香りに包まれる。  これがサクヤの神気なのだと理解に至るほどには、神としての本質を取り戻せているのだろうか。 「身体は、なんともないの?」  サクヤは本来の姿を維持する為に、わずかな時間であっても神気を消耗する。  真知の言葉が胸につかえていた穂花は、たまらず問うた。 「えぇ、おかげさまで。此度の魂依代(たまよりしろ)とは特別相性がよろしいようで、存外早く神気も安定して参りました」 「たまよりしろ……?」 「(たか)千穂(ちほ) (さく)()という青年のことです。彼と私は、元々異なる存在でございまして」 「えっと……つまり」 「別人だった、と申し上げましたら、おわかりになるでしょうか」  朔馬とサクヤが別人だった。その事実は理解できる。しかし、それが意味することは想像もつかない。  首をひねる穂花を前に、自嘲気味な笑みがもれる。  
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