*20*花よ咲け

5/11
前へ
/479ページ
次へ
「私の肉体はもうございません」 「……え」 「すでに死しているのです。しかしながら、生命を司る私は死者を統べる女王イザナミ様に疎まれており、黄泉へゆくことも叶いません。魂のみのまま、依り処となる肉体を見つけては死に、また見つけては死に……ということを、何千年と繰り返してきました」 「いまのさくは、魂だけの存在……? 高千穂先生は、さくに身体を貸してるってこと……?」 「はい。魂依代は、私の神気に耐え得る肉体である必要がございます。高千穂家は、ニニギ様と生前の私との間に生まれた子の一族……つまり朔馬は、私共の末裔なのです。血族であるからこそ神気も馴染みやすく、とりわけ朔馬はその才に恵まれておりました」  サクヤの話す通りならば、ひとつ気にかかることがある。 「高千穂先生自身が、身体を貸すことを承諾してるんだよね?」  サクヤのことだ、無理を強いることはしないだろう。  両者の間には合意があった。ほぼ確信しながら問えば、サクヤは静かにうなずく。  
/479ページ

最初のコメントを投稿しよう!

470人が本棚に入れています
本棚に追加