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「実は、朔馬は生まれつき身体が弱く、若くして死する運命にありました。私の魂依代となることで生命を得、私も肉体を得る……私たちは互いになくてはならない存在なのです」
「そうなんだ……高千穂先生は、いまどこに?」
「……私が憑いたとき、かなり衰弱しておりまして、朔馬の意識は未だ眠っております。私の神気と完全に馴染み、安定すれば、やがて目醒めるはず。とても優しい青年です。穂花にも早く紹介して差し上げたい。朔馬もまた、貴女様の夫となることを喜ぶでしょう」
「あ……そっか。そうだよね」
サクヤは自分の伴侶。朔馬とサクヤが運命共同体ならば、朔馬も夫となる。
考えてみれば至極当然のことながら、人間として生きてきた時間の長い穂花にとっては、どこか夢物語のように感じられる。
「ねぇ、さく」
「はい」
「ニニギとさくは夫婦だった……それを知った上で、私は……紅と身体を重ねたの。あなたは、こんな私を軽蔑する……?」
こわごわと問う穂花に、サクヤは静かに、穏やかにかぶりを振る。
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