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「わたしだって、辛いのです……ほかの男に抱かせるくらいならわたしが抱きたい。けれど弟の幸せの邪魔もしたくない。でもっ……やっぱりわたしが抱きたいんです~!」
「あ――っ! わかった、紅の気持ちは充分わかったから!」
「……また、褥を共にさせて頂けますか……?」
「う……ま、まぁ一応夫婦? ですし……」
「よし、覚悟なされよ。夜空が白むまで、寝かせませぬゆえ」
「まさかの泣き真似だった……!?」
「今度こそ、孕んで頂きますぞ……?」
「もう逃げたい!!」
紺青の袖で顔を覆い、草笛の音色を震わせていた姿もいまはいずこ。
けろりとのたもうた紅は、言質を取ったとばかりにしたり顔だ。
「兄上、あまり穂花に無理は仰られませんよう」
「一夜で孕ませたやつがよく言う。たまには兄を立てんか」
「兄上……」
「わたしとて、獣のごとく肉欲にまみれるほど、馬鹿ではないわ。懐妊なされるまで、何度でも、優しく愛でさせて頂きますから……ね?」
うっとりと紅玉を蕩けさせ、頬を擦り寄せる紅は、もうなにを言っても聞き入れそうにない。
サクヤもたしなめることを止め、苦笑を返してみせる。
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