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わざわざ背後を取った青年は、椿の生け垣から眼を逸らさせたくてたまらなかったような、もどかしげな面持ちをしていた。
真知との間には、2歩分の距離がある。穂花はそれがもどかしかった。
「あいつらはどうした」
淡々と問う眼差しは、ひとりで出歩く妹を叱る兄のようであって、ちがう。
「紅とさくは兄弟水入らずしてもらってる。蒼はお腹いっぱいで、お昼寝中だよ。……まちくんは、落ち着いた?」
蒼に足止めされ、剣を抜くほど激昂していた真知だ。
そう簡単には冷めやらぬとは思っていたが……彼はやはり、神体のままであった。
「おかげで未だにくすぶってるぜ。はらわたが煮えくり返るほどにな」
「ねぇまちくん、誤解させちゃったけど……紅も蒼も、ホントは優しいんだよ?」
「そうやっておまえが庇うことが気に入らない」
見誤った。
2歩分だと高をくくっていたが、真知にとっては1歩にも満たなかった。
呆けている間に距離を詰められ、肩をわし掴まれてしまう。
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