*22*遥かなる懐古【R18】

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「まちく……おねが、はやく……んっ」  ろくに思考も回らない中、早く楽にしてくれとねだる。刹那、真知の整った造形がぐ、と歪む。 「ばか……あんまかわいいこと言ってると……っ!」  自分の一言が、語尾ごと真知の理性を焼き切ったことを、いまの穂花に理解できるはずもない。  辛うじてわかるのは、荒い呼吸の中、自分の名を喚び続ける声。 「穂花……ほのか、ほのか……っ!」 「まち、く……んんっ!」  熱に濡れた視線を交わし、どちらともなく唇を重ねる。  主導権を握ることが男の矜持だと、サクヤは話していた。では、閨において女の矜持とはなんなのだろう。  少なくとも、抱かれながらちがう男性へ想いを馳せることだとは、到底思えなかった。  そんな雑念を悟られぬように、自ら唇を開き、熱い舌を迎え入れる。  昨晩までは、たしかに生娘であった。甘えたような吐息を漏らしながら舌を絡ませるいまは、自分の使い方を良く心得た、浅ましい女だ。  
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