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「それは……何故です?」
「まちくんの傍を、離れられないの」
「離れられない? なにか術でも施されたのですか? ですが、オモイカネ様がそのように強引な真似をなさるとは……」
「ちがう、そうじゃないのよ」
「どういうことですか、穂花……?」
問われている。答えなければならない。
答えられるのだろうか? 嗚呼それでも……
夫だからこそ、伝えなければならない。
「さく、私――赤ちゃんが、出来たの」
菫の双眸が極限まで見開かれる。
心根の優しい彼は、咎めないだろう。
だからきっと、哀しませてしまう。
……それが哀しくて、息苦しかった。
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