*4*菫の進言

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 紅は家事から穂花の身の回りの世話に至るまで、なんでもそつなくこなしてみせる。口を挟む間もないほどに。これほど神らしくな……家庭的な神もいないだろう。  否、神ゆえになんでもこなすことができるのか。成程、これぞ全知全能。 「吾妹、如何されたか? 急に黙り込みなさって」 「……」 「吾妹」 「…………」 「……構ってくれ、細君(さいくん)」  ……まずい、と箸の手が止まる。  吾妹と喚ばれているうちはまだいい。  しかし細君はどうだろうか。  どちらも愛する女性の呼称であるが、前者は軽いたわむれ、後者は魅惑的な睦言というように紅が使い分けていることを、長年の経験から導き出していた。  いつもいつも出し抜かれているのが面白くなくて、なんとなく無視をした結果がこれとは。  沈黙を(いぶか)しんだか。  紅は主の背へ近づくと、()()(たま)の長髪をそっと掻き分け、のぞく白いうなじに朱の唇を寄せる。  
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