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「……水の質が良くなっても、適度に雨が降らなければ、結局は作物も育たん」
「ご心配は無用でございます。彼の地は毎年必ず雨の降りますところ。不作の要因がわかりましたことですし、我が領地も安泰ですな。はっは!」
自分は知恵の神であるが、並々ならぬ疑問が生まれる。
この世に絶対などない。声高々と断言できる理由を是非とも教授してもらいものだと、素直に感じた。無意味なこととは、内心悟りつつも。
……自分は憎たらしいほどに聡明であったから、知っていたのだ。
「ご多忙の折りに、大変失礼致しました。それでは、これにて」
好好爺の笑みを浮かべて腰も低く退室した神が、
「……ふぅ、かなわんなぁ。あのように無愛想な方のお相手は、骨が折れる」
……と、扉の板一枚を隔てた向こう側で、なにを言っているのかも。
初めてのことではない。いまさら口うるさく追及するつもりもない。
自分のことよりも真っ先に、声を上げたかったことがあるとするならば。
「……テメェの領地だろうが。自分を崇めてくれる人間くらい自分で守れよ、阿呆が」
このように聞くに耐えない、罵倒のような言葉のみだ。
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