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「どうかしたか」
「どうしたもなにも、扉の前になんか珍妙な生き物が転がってたんですけど!」
ㅤ珍妙、と復唱したとき、ふと、声を荒らげるタケミカヅチの右の小脇に、なにかが抱えられていることに気づく。いや、なにかというか、あれは間違えようもなく……
「珍妙で悪かったな。俺の姪だ」
「姪……!?」
「おじさま~」
「お兄さま」
「おにいさま!」
「よしいい子だ。で、どうしたんだ、ニニギ」
「おしごと、まだですか?」
「……あぁ、もう八ツ時か。ちょうどいい、一息つくとするか。ニニギ、こっち来い。茶を淹れてやろうな」
「やった~!」
ㅤすとん。とてとて、ぽふり。珍妙な生き物もといニニギが、腕から抜け出し、オモイカネへ駆け寄る。本人に自覚はないようだが、あの強靭な仏頂面がしまりなく緩む光景に、流石のタケミカヅチも戦慄した。
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