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*3*憧憬と嫉妬
穂花を主とあおいだ名もなき神は、次いで付喪神であることを告げた。
付喪神とは特定の神を指すものではない。永い年月を経て、道具に魂が宿った類いの総称。とりわけ彼の神は、狐の面に憑いた付喪神だという。
出会いを彩る椿を思い描くままに、紅という名を与えた黄昏もいまは昔。
ありし日に立てた誓いを寸分違えることなく、紅は今日まで片時も穂花の傍を離れることはなかった。
愛犬を亡くし、母を亡くし、とうとう独りになってしまったいまも尚――
「ほんっと、警備会社も恐れおののくほどの24時間体制だわ……頭痛が痛い」
ゆったりと流る風景は淡い蒼。越冬を果たしたつばくらめが艶やかな藍黒色の翼を広げ、揚々と滑空する様が、気重な穂花にはまぶしい。
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