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*20*花よ咲け
彼の二柱を足止めせよ。命を奪ってはならぬ。
誓約の後、紅は使い魔である蒼に言い付けたのだという。
真知とサクヤを遠ざけた蒼は、見事主の期待に応えてみせたのだ。
一夜の出来事がにわかには信じ難い。が、天真爛漫な蒼が狂暴な妖としての性を持ち合わせていることは、真知に剣を抜かせた事実が証明している。
「ねーさまは、あおがキライになっちゃった……?」
サクヤの説教を受け、穂花に問いかける硝子の声音は不安げであった。
いまにも雨の降り出しそうな天色に、責め立てる気など起きるはずもない。
「嫌わないよ。自分がケガしても、蒼はまちくんやさくを傷つけたりしなかったでしょ?」
「だって、ぬしさまの言いつけだったから……」
「蒼のそういう純粋で一生懸命なところ、私好きだよ」
「……ふぇっ、あおもすき! ねーさまだいすき~!」
「わっ!?」
感極まった蒼は、穂花を熱く抱擁するだけにとどまらない。頬の鱗を擦り寄せられ、ちろり、ちろり。慣れない感触にしばし呆けた穂花は、3拍遅れて舐められたことに気づく。
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