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*4*菫の進言
日本晴れを戴く屋上。南中した太陽とは対照的に、穂花の機嫌は最底辺を蛇行していた。
「私、どんどん自分がダメになってく気がするわ……」
「それは重畳。今後とも全身全霊を以てお仕え申し上げるぞ」
「あのねぇ、紅は私を甘やかしすぎだと思うの!」
「吾妹の為ではない。吾妹をどろどろに甘やかし、厭がる姿に快感を覚えたいが為。その証拠に、やめろと言われてすぐにわたしがやめたことはなかろう?」
「たしかに! 最低!!」
ああ言えばこう言う。はじめから開き直っているこの変態付喪神は、さすが一筋縄ではいきそうもない。
手持ちの重箱――ひとり用の小ぶりのもの――をちゃぶ台よろしくひっくり返しそうになるが、困るのは自分。ぐっと堪えるほかなかった。
口ではなんと言おうが、穂花が食してくれることを知っていた紅であるから、給仕の意味合いも兼ねて傍近くで誇らしげに見つめていた。
だし巻き玉子を嚥下し、脇に控える付喪神をそっと見やる。
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