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幕間 本日も平穏なり
卯月から皐月へ。季節は移ろえど、仰いだ天道の蒼さは変わらない。
「穂花、あんまり見上げてると、ひっくり返るぞ」
「なっ、私そんなにドジじゃないもん!」
淡々とした指摘はいつものことで、子供のように反論するのも日常のひとつ――
「……はぁ」
「ちょっ! 人の顔見てため息とは、しつれ――!」
「〝もん〟とか可愛すぎかよ……俺の嫁が今日も愛しくてつらい」
「………………」
――否。いつもの、というには語弊があるか。
昼休みに入って十数分と経っていないように記憶しているが、早々に箸を置いた真知は、穂花を後ろから掻き抱く。
彼の脚と脚に挟まれ、耳許で悩ましげな吐息をこぼされては、いよいよ身の危険を感じてならない。
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