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*28*凍りつく夕炎(挿絵あり)
「ニニギ様、ニニギ様――」
軽やかな旋律が、まだらに夕照の降り注ぐ木陰を流る。
新たにあつらえた紅の衣にはどうも慣れず、気を抜けば裾を踏んでしまいそうになる。
それでも躍る胸を抑えられず、浮き足だった脚で駆けるのを止められない。
「ニニギ様! こちらにいらしたのですね」
想い焦がれた相手は、やはり邸近くの森を散策していた。
高千穂の地、自分の庭も同然のこの森で彼の神気を探り当てることなど、造作もない。
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