*2*艶色の朝

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*2*艶色の朝

 四季は巡り、十数年の時が流れる。 「……も、わぎも、(わぎ)()」  この日も平穏な朝を迎える――はずだった。 「もう朝じゃ。学舎に遅れてもよいのか?」  まどろみの中、布団のかたわらで草笛の音色が耳をくすぐる。  勿論よくはない。よくはないとわかっているけれど、 「ぅう~……いま、おき……れない~……」  伸びをした傍から、睡魔に抗えず布団へ逆戻りと相成る。 「成程、職務放棄か。つくづく困ったものよ」  呆れたようで満更でもなさげな声が、頭上より吹き下ろす。まだ清明でない意識の中、揺らぐ影にぼんやりとまぶたを押し上げたところ、 「では、此方も遠慮なくゆかせてもらうぞ。我が細君……?」  清涼な朝に相応しくない艶声で、(ほの)()は覚醒した。  弾かれたように寝返りを打つが、視界には一向に木造りの天井が映り込まない。一面を覆う色は――翠。 「(ようや)くお目覚めか。お早う」 「え……あ、ちょ……っ!」  太陽のごとき笑顔を向けられるが、横たわった身体には違和感が這う。気のせいではない。  
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