生まれてこの方、猫というものに縁がない。

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 そしていま。  私は島との連絡船に乗って移動している。  ほんの十分程度の短い航海だが、普段船に乗るということがない私はそれだけで少し興奮していた。  船には島民と思われる人が十数人は乗っていた。ほとんど年配の方々だった。  明らかに存在が浮いている自覚はあったが、仕方ない。  一応観光に訪れる人もいないことはない島だ。  時季外れの変な観光客だと思われてはいるだろうが。  島の港に着き、島に降り立った。のどかな島だ。  耳を澄ませば海鳥の鳴き声が聞こえてきて、車の音も稀にしかしない。  さて、それにしても猫がいない。  仮にも猫島と呼ばれているくらいなのだから、船から下りると同時に数匹は目撃するものと思っていたのだが、全くいない。
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