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自動運転が主流となった今の時代、事故は飛躍的に減った。
しかし、AIが操縦するとはいえ、絶対ではない。人間が運転するよりも、はるかに危険は少ないが、やはりゼロではないのだ。
それに備え、自動車業界が金を積み、補償会社を設立し、治療費や慰謝料、場合によって死亡見舞い金を支払っている。
「お子様は、ご自分の足で車の側面に飛びこみ、かする程度の接触で大きく転倒したことが、映像で残っています。当局では、故意の接触と判定しました。治療費は業界の積立金よりお支払しますが、それ以上のものを、お渡しすることはできません」
「貴様、それが事故を起こしたやつの言うことか」
『C』が激高して立ちあがったときに、ドアがノックされた。
絶妙のタイミングで、コーヒーが舞い込む。
モニターで観察しているのだから、このファインプレーは当然なのだが。
ミサトがカップとソーサーをテーブルにすえた。オレだけに見える角度で、またくちびるのはしを上げた。
室外へと引き上げるミサトの尻を、『C』はカップからインスタントをすすりながら見つめている。
お前は、まだ自分が優位だと勘違いしているようだな。
これから始まるオレの仕掛けにはまれば、お前は自分の足で帰れなくなる。
そんなワナが張られているとは、思いもしないだろうな。
運命はいつも自分の知らないところで回っているのだ。グッドラック。
さて、むさい顔も見飽きた。仕上げをするか。
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