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「お客様を待たせるとは、大層なご身分だな」  尊大な仕草に横柄な口調。  最後に大きく一息吸ってから、タバコをもみ消すのがいかにも卑しい。  がらがらとした声と、この面構えは陸棲の両生類を想起させる。産卵のときだけ水辺に集まるヒキガエル。 「何かお飲み物を、差し上げましょうか?」  お客様云々の売り言葉には、バカバカしくて返事などしていられない。 『C』は喜々として、コーヒーと告げた。  無料でもらえるものは、なんでもふところに入れて生きてきたのだろう。  頭にセットした電子端末から「お客様相談室にコーヒーをひとつ。味のわからないやつだから、インスタントで十分だ」とメッセージを飛ばした。  ミサトから手わたされたファイルを開き、『C』の前に置いた。  内容を要約するとこうだ。  子供が車にはねられて、ケガをした。  それによって生じる金銭はこれだ、と記されている。 「お電話で何度も申しました通り、慰謝料については、お支払出来かねます」 「なんのための保険だ。ケガの治療費だけで済まそうとは、誠意がなさすぎる」  さすがは当たり屋。  目に見えない誠意を盾にするとは、芸がなさすぎる。
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