7人が本棚に入れています
本棚に追加
「落ち着いて思い出して下さい。覚えはありませんか? お子様に転び方の指導をした」
オレが口を閉じると一拍おいて、額にカップがぶつかり、割れた。
ゲス野郎の頭は、知恵がまわることはないが血は昇りやすいらしい。
いくら淹れたてでも、インスタントではコロンの代わりにもなりやしない。
熱がりもせずにコーヒーを髪から垂らすオレの視線に気圧されたのか、『C』は頬をひきつらせるばかりで、声が出なかった。
「おみごと。器物破損が犯罪なのはご存知ですね。おもてにパトカーをご用意しております。ドライブを満喫して下さい」
現行犯逮捕用の格闘アンドロイドが室内に流れこみ、『C』の両腕をとった。
カエルの脳みそでは、暴れても無駄なことすらわからないのか。果敢にも殴りかかっている。
相手がロボットだから、拳をふるうことも平気なのか。
それとも生身の人間にも同じように手を上げるのか。
精神のクラッシュしたクレイマーの気持ちを理解したところで、スコッチが不味くなるだけだ。
考えるのは、やめだ。
膨大な情報から瞬時に適切なものを引き出せるAIのオレに、無駄な選択はない。
最初のコメントを投稿しよう!