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私は大変腹が減った。いつもは用意されるかりかりが今朝は無かったのである。
しかし、私は別段腹を立てているわけではない。昨日はあの朴念仁、遅くまであの細胞が、この細胞がと学会の若い連中へ親切に知識をばら撒いていたのだろう。私は偉い先生の猫なのだ。私も馬鹿なことで腹を立てていられない。
でも、まあ、どうしたものか。
私はあてもなく狭い寝室から、三度飛び跳ねれば越えられる短い廊下を抜け、居間へ来た。
ここには申し訳程度に台所もある。ただし朴念仁も申し訳程度にしか、このささやかな台所へ立たないから問題はない。早く嫁でも捕まえてくれれば良いものだ。
珍しく小鍋があった。
なるほど、なるほど。一昨日の荷物は先生の母からであったか。
朴念仁が飯にありつけたように、私もどうやら飯にありつけそうだ。
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