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斜めに引かれた椅子、放置された皿とグラス、両足とも裏を向いたスリッパ。
朴念仁はよほど急いで家を出たらしい。
私はそれらを通り過ぎ、コンロの上へ置かれた鍋の元へ跳んだ。
鍋の近くへ跳び寄ると、つんと独特な匂いがした。
これは、あの朴念仁が酔って良い気分になった時にだけよこす鯛の刺身と同じ、鼻から抜けてゆくあの匂いに似ている。
鍋の蓋は半端に閉じている。
それを叩き開けると、海の匂いが私を襲い。もう一つの衝撃も私を襲った。なんだこれは。
私はこれを初めて見た。緑色をした、どろどろとヘドロのような物。
それが鍋の底へ溜まっていた。朴念仁の先生はこれを食べただろうか。
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