食べようか、食べまいか

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 匂いは、一口で幸せになれる鯛と同じような感覚がある。魚だろうか。いや、魚にはとても見えない。 しかしだ、隣のブチさんなんかが、「これは魚なんだぞ」とちくわを自慢していたような気がする。 では、これもそうなのだろうか。  いやいや、私は緑のものならばいくらでも見たことがある。問題なのはどろどろとした見た目だ。 液体でもなく、個体でもなく。緑なのだけれど、重なり合った部分などは黒くも見える。 私はあの朴念仁も食べたのなら、食べてみたい気がした。 それに美味でも、そうでなくてもこれに次お目にかかれる日はそうないだろう。 ある種のレアリティの高さ。それが私を不思議に惹きつけている。 私はあの朴念仁よ早く帰ってこいとも思った。 いっそ、食べるなと、それは俺の飯だと、そう叱ってくれた方があきらめがつくというものだ。 十分、いやもしかしたら一時間かもしれないし、十秒だったかもしれない。 私はその緑と睨みあった。 食べようか、食べまいか。 朴念仁も食べたのだ、体に害のあるものではないのだ。そうだ。 私はついに決心し、緑へ前足を伸ばした。
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