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緑はほんのりと温かかった。
朴念仁が送られてきた材料で作ったのか、それともこのまま送られてきたのか私には見当がつかない。それでも、この温かさが、あの朴念仁も食べたのだという、確信を得る安心になった。
押し込むと、その分前足が緑に飲み込まれた。私は驚いて右足をひっこめた。
すると、ひっこめた右足には緑がついてきたのだ。
私のお世辞にも綺麗とは言えない三毛の体毛に、絡まり、縺れ、伸びてまとわりついた。
伸びたのだ、この緑は伸びたのだ!
まさにパニックである。
なぜか台所を汚してはいけないと考えた私は、咄嗟にひっこめた右足を上に上げた。
この上へ上げたのが良くなかった。
よほど焦っていたのであろう、咄嗟に上げた足には思いのほか力が籠められ、私の頭上まで上げられた。
絡まった糸は弧を描き私の頭上へ跳んだ。
重力に従い私の顔へ降り注いだ、糸と緑から逃げるためもう片方の前足で顔を拭おうとした。
しかしこれもまた、咄嗟にとる行動とはたいてい裏目にでる。
緑が絡まった右足と、拭いにいった左足。
なんというか、咄嗟の行動はたいてい裏目に出るのだが、その行動とは時に並外れた能力を呼び覚ますのでしょう。後ろ足二本で立ち上がった私は、そのまま二つだけ歩けたのだ。鍋のほうへ。
鍋の側面へぶつかった私は、そのまま前へ倒れた。
咄嗟に体をひねるがこれは何の効果もなく、緑へ私は飛び込んだ。
そして、その衝撃で鍋は床へぶちまけられた。
緑と、床へ自由落下したくせに受け身の一つも取れなかった私の仰天ぶりは凄かった。
軽々と2メートルは飛び上がり、そのまま着地。
狭い台所を転げまわり、飛び回り。着地しては転げ、起き上がり。
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