プロローグⅠ

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をいたぶっている憎き奴らだった。サトは遊具から急ぎ降り、逃げようとしたが間に合わない。中途半端な体勢のまま4人の悪魔に捕まってしまう。 「おい乞食!何勝手に乗ってるんだよ!」  渡野木ひろしという男子が抜け抜けの汚い歯を剥き出しにして唾を飛ばす。  乞食とはサトが学校で呼ばれている綽名だ。…たしかにうちは貧乏だがお前らに物乞いした覚えなど一度もない…心の中で叫びながらサトは顔を伏せ歯を食いしばる。 「ムカつくね、もうこれ汚くて乗れないじゃん」 「くっせーんだよ!降りろ降りろ!」  4人は次々と罵詈雑言を浴びせ、遊具を力いっぱい回し始める。 「やめて…よ」サトはくぐもった声で助けをこうも、4人は全く力を緩めない。逃げようとして体勢が中途半端になっていたため、遠心力で振り落とされそうになる。 「あああ、ああああ!」  サトは恐怖のため声を荒げた…がやはり悪魔どもは容赦しない。さらに強くサトもろとも遊具を力いっぱい回しまくる。さらに体勢を崩してしまい、ついに遊具から投げ出されそうになる。サトは左手で手すりに?まったが体は外に投げ出され、右手と髪の毛が回転する遊具と木製の土台の間に巻き込まれてしまった。「ぎゃああああああ!」サトは絶叫した。 頭部と右手に激痛が走り、ぐちゃっと何かが潰れる音が聞こえたと同時に身体は宙に浮き、地面に思いっきり叩きつけられた。何か生暖かい液体がボタボタと顔につくと、再び激しい痛みを認識した。サトは顔を顰めながら自分の右手をかざしてみた。 「?―アアアアアアアア!」  サトは腹の底から咆哮した。右手の人差し指と中指が根元から無残にちぎれており、傷口から血があふれ出てくる。頭髪の一部も抜け落ちていたがそちらの痛みは今気にならない。 「うああぁぁが」サトは大量の出血によりパニックに陥った。 (誰でもいい!助けて!)サトは地面に転げながら辺りを見回したが、そこには誰もいなかった。4人の生徒はサトの様子を見て恐れおののき、校舎に逃げ帰っていた。 (そんな…死んじゃうよ…本当に死んじゃうよ…)サトは泣き叫びながら、何とか立ち上げる。回転により三半規管が麻痺している上大量の出血によりまともに歩けない。サトは千鳥足でふらつきながら校舎へ向かうが、指からは血が信じられない勢いで流れ出てくるため、すぐに力尽き、途中で倒れ込んだ。  
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