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正平はサトを苛めていたことを心の底から後悔した。これほどの恐怖を感じたことはなかった。サトのこの世のすべてを呪詛するような強烈な視線は間違えなく自分を…正平はそう感じた。
この世の怨念のすべてを放出しているようなサトの表情はあの日以来、毎晩正平の枕元に現れ精神を削り取っていく。
「…君の4人はちょっとお話があるので図工室まで来てください」
「‥‥!」
いつも何かに怯えたような声で話す担任が自分の名前を呼んだ気がした。心そこにあらずの状態だった正平だが教室を確認してみると、ひろし、岳人、京子の三人の表情に明らかに脅えが走っているのがわかる。
4人は、一言も口を聞かずに図工室へ移動する。だが、よく考えるとあの事件以来学校へ来るのは今日が初めてなのだ。あの時のことをいろいろと聞かれるのはしょうがないのかもしれない。
正平は図工室でも一言もしゃべらなかった。ひろしと岳人は二人で何かぼそぼそと喋っている。京子は少し離れたところで俯いていた。正平は洗いざらい本当のことをしゃべってしまいたかった。これ以上罪の意識に耐えられない。サトの呪いから解放されたかった。
ふと、顔を上げるとひろしがこちらを睨みつけていた。恐らく自分の怯えた表情から何となく考えを読まれたのかもしれない。正平はひろしから目を逸らす。恐らくここで教師に本当のことを言えば、自分が次の苛めの対象になってしまうのだろう。一体どうしたらいいのか…正平は泣きたくなった、と、その時ガラガラと教室のドアが開かれた。
ゆっくりと何かが図工室に入って来た。4人の動きがぴたりと止まった。全員入口にたっているものを凝視していた。ここにいるはずのない人間だった。
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