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「そう言えば、キミ、さっきは我関せずーって感じだったよね」 「え?」 「もう、ちゃんと会話に入らないと……。これは、キミ達新入部員の歓迎会でもあるんだからね?」 「ははは……ちょっと、緊張しちゃってて……」  まさか見られていたとは……。笑って誤魔化す僕に、先輩は言う。 「ほらほら。こういうのも創作での何かしらの材料になるんだからね? 花見なんだし、下ばかり見ていないで景色くらい見てみなよ」 「景色……」  先輩に促され、周囲を見渡す。考えてみれば、こうしてこの時間にじっくりと景色を見たことは少ない。  夜の校舎、星が散りばめられた夜空、桜……。そして一際目についたのは、鮮やかな黄金色の月だった。全ての景色が、まるで月を際立たせるためにあるかのように思えるほど、その美しさに心を奪われてしまった。   「どう? 何か感想は?」  明るく尋ねてきた先輩に、思うまま答える。 「――……先輩」 「ん? どうしたの?」 「月が、綺麗ですね」 「……え?」
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