4.雨に消える慟哭

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ひとつの傘を握り合ったまま、昇降口の軒下で押し問答を続ける私と佐尾くんを、行き過ぎる生徒たちがちらちらと見ていく。 他の人たちの遠慮のない視線に晒されながらただ困惑していると、突然、声音の高い女子の声が聞こえてきた。 「佐尾ー。何してんの?」 「清水……?」 その声が清水さんのものだとわかった途端、私の肩がびくりと震える。 清水さんは、ひとつの傘を握り合っている私たちを一瞥したあと、まるで私の存在なんて見えていないかのように佐尾くんにだけ、にこりと笑いかけた。 「どうしたの、佐尾。頭、すごい濡れてるよ」 清水さんが笑いながら、佐尾くんの明るい茶色の髪に馴れ馴れしく触れる。 「あ、佐尾、もしかして傘忘れた? いれてってあげようか? 途中まで一緒だし」 「いや……」 困ったように眉尻を下げる佐尾くんの腕を、清水さんが強引に引っ張る。
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