4.雨に消える慟哭

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降りしきる雨の中、折りたたみ傘を握りしめる感覚だけを頼りに、ただひたすらに走る。 周りを歩く生徒たちの姿が見えなくなった頃、もうここまでくれば……と、ようやく足を止めたけれど。必死になって走ったのはひさしぶりのことで、立ち止まってもなかなか呼吸が落ち着かずに息苦しかった。 足元を気にせず走ってきたせいで、学校指定のローファーは雨水を含んで重たくなっている。 走るのに必死でかなり傘を振り乱したから、制服のブラウスもスカートも雨に打たれて濡れていた。 何も言わずに逃げ出した私は、佐尾くんの目にどう映っただろう。 今になってそんなことを気にしてもどうしようもないのに、怒っているような、今にも泣き出しそうな佐尾くんの顔が脳裏を過って胸がざわついた。 私が気にしなくたって、きっと佐尾くんは清水さんの傘で家まで帰ってる。
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