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冷えた身体を小さく震わせながら、せめてこれ以上は雨に打たれないように、しっかりと傘を立てて持つ。
「西條さん!」
だけど一歩踏み出そうとしたとき、後ろから聞こえてきた声に、傘をつかむ手が滑りそうになった。
まさか、彼の声が後ろから追いかけてくるはずがない。
「西條さんっ!」
雨音に紛れてもう一度聞こえてきた声は、私の幻聴ではなかった。
声に引き留められるように立ち尽くしていた私の肩に、確かな手のひらの重みがかかる。
「西條さん、やっと追いついた」
肩越しに振り向いた私の視界に鮮明に飛び込んでくるのは、最近は少し見慣れた黄色味の強い明るい茶色。
息を切らしながら、それでも口元に笑みを湛えて私を見下ろす佐尾くんは、頭から足の先まで全身びしょ濡れだった。
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