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「傘、は……」
目の前に佐尾くんが立っている。その状況に頭が混乱していた。
もっと気の利いた言葉掛けができたっていいはずなのに、私の口から零れたのはそんな的外れな質問で。それを聞いた佐尾くんは、濡れた髪を揺らしながらクスリと笑った。
「さっき言ったじゃん。忘れたって」
「でも、清水さんがいれてくれるって……」
「うん。でも俺は西條さんに頼んでた」
ふっと佐尾くんの顔から笑みが消えたかと思うと、彼が真っ直ぐな目で私を見つめる。
「どうして急に逃げ出したりしたの? 俺、西條さんに何かした?」
そんなことをわざわざ尋ねるために、雨に濡れながら私を追いかけてきたっていうの?
心配そうにそっと首を傾げる佐尾くんを前に、どうしたって理解できそうにない疑問が湧いた。
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