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傘を差さない佐尾くんの髪の先からは、ポタポタと小さな雫がいくつも滴り落ちている。それが、降り注ぐ雨とともに顔や身体を伝って流れていくのが見えた。
「西條さん、とりあえず一緒に帰ろう? このままだと風邪ひいちゃう」
この状況で風邪をひくとしたら、どう考えても佐尾くんのほうだ。
それなのに、穏やかな表情で微笑みかけてくる佐尾くんが何を考えているのかさっぱりわからない。
彼が優しい言葉をくれればくれるほど、得体のしれない不信感が私の心を掻き乱す。
もし昼間の清水さんの言葉を聞いていなければ、今よりは優しい気持ちで佐尾くんに微笑み返すことができたのかもしれない。
でも今の私の心は、佐尾くんのことを頑なに拒否していた。
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