4.雨に消える慟哭

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佐尾くんが雨の日に私に声をかけてくれるは、きっとショコラや茶太郎を構ったのと同じ理由。 クラスの中で、私がいつも、誰とも話すことなくひとりきりでいるからだ。 浮いてるならまだ逆に存在感もあるかもしれないけど、私は地味過ぎて、クラスで浮いてすらない。そんなな私が、ショコラを助けた雨の日に、たまたま佐尾くんの目に留まった。 だから、友達だ、クラスメートだ、とやたらと私に構ってくれるのだ。 自覚的にそうしてくれているのなら少しは救われるけど……。佐尾くんの場合は、無自覚で私に優しくしてくれていたんだろう。 そうでないと「どういう意味?」なんて、真顔で問い返してはこないだろうから。 「悪いけど、離してもらっていいかな?」 「え?」 「これ、私の傘だから……」 これからどうしたって、私と佐尾くんが相入れることなんてない。そもそも、こうやって向かい合ってることが何かの間違いなんだ。 佐尾くんから傘を取り返そうと強く引っ張る。 だけど、どれだけ引っ張っても、彼は私の傘を離そうとしなかった。
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