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佐尾くんは、私が一緒に帰ると言うまで手を離さないつもりなんだろう。そのことを悟った私は、仕方なく傘を諦めることにした。
「わかった。返してくれないなら、その傘はあげる」
パッと傘を離すと、佐尾くんが大きく目を見開く。まさか私が傘のほうを諦めると思わなかったのか、
雨に濡れ始めた私の頭上に、折りたたみ傘を慌てて差し出してきた。
「ちょっと待って。それじゃぁ、西條さんが濡れる……」
「大丈夫。返してくれないなら、傘はいらないから」
「どうしてそういうことになるんだよ。一緒に帰ろう。送ってく」
「必要ないよ」
翳された傘と佐尾くんを避けて早足で歩き出すと、彼が焦って追いかけてきた。
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