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「大丈夫?」
聞こえてきた声に顔をあげると、佐尾くんがすぐ間近で不安そうな表情を浮かべていた。
はっと視線を巡らすと、折りたたみ傘がそばに転がり落ちていて、私は佐尾くんに身体ごと全部抱きしめられている。
佐尾くんが、動けなくなった私を助けてくれたの……?
「びっくりさせるなよ。ほんと、危ない」
茫然と見上げる私を、佐尾くんが勢いのままにぎゅっと胸に抱き寄せる。
「いっ……」
その衝撃で、佐尾くんの胸に額をぶつけた私が間の抜けた声を出すと、慌てたように私の肩をつかんで、勢いよく胸から引き離した。
「あ、あー。ごめん……。また、ついやっちゃった。おでこ、大丈夫?」
無防備になっていたところに、佐尾くんの手がすっと額へと伸びてくる。制止する暇もないままに、佐尾くんの手が私の濡れた前髪をかきあげたから、全身が一気に冷たくなった。
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