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◇
「ミャー」
すぐそばで聞こえてきたショコラの鳴き声で目が覚めた。
ふわふわの長い尻尾が、悪戯に私の頬の上を行ったり来たりする。
たまに遊びに来ても私にはあまり懐かないショコラが、私に構うのは珍しい。
ゆっくりと身体を起こしてその背中を撫でようとすると、ショコラが跳びはねるように私から離れて行った。ただの気まぐれだったらしい。
それにしても、どうしてここに……?
物が少ない、こざっぱりとした部屋を見渡す。見覚えのあるこの場所は、従兄弟の部屋だった。
おもむろに、前髪の上から額に手を載せる。
心なしか湿っぽい髪に手のひらが触れたとき、思い出したのは佐尾くんの顔だった。
私、佐尾くんの前でとても取り乱してしまった。
彼に見られてしまった額の傷を、前髪の上から強く押さえる。
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