4.雨に消える慟哭

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「佐尾くん、トモくんの働く病院に電話してきたの?」 「そう。雨に濡れてパニックになってるお前とは会話が困難で、俺の働く動物病院の番号をスマホで検索して電話をかけてきてくれたらしい。駆けつけたら、お前はパニックになってるし、佐尾くんも雨に濡れたままお前のそばで途方にくれてるしで大変だったよ」 「ごめん……」 「そのまま家に送って行ってもよかったけど、雨に濡れてパニックになってるお前のこと見たら、おばさん心配するだろ。だから、とりあえずうちに連れて来た。濡れた制服は今乾燥機に突っ込んでるから、もう時期乾くよ」 「え……」 言われてはたと見ると、私はトモくんのものらしいTシャツと短パンを着せられていた。 トモくんが着替えさせてくれたんだよね……。従兄弟とはいえ、私ももう子どもじゃないし、トモくんは男の人だし。 複雑な気持ちで顔を上げると、トモくんが苦笑いした。
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