4.雨に消える慟哭

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「濡れたままよりいいだろ」 「そうだけど……」 「お前なんて、俺からしてみればただの子どもだよ」 何とも思っていない顔でトモくんは言うけど、やっぱりちょっと複雑だ。 言葉を飲み込みながら、麦茶のグラスを口に運ぶ。 そんな私の様子を、部屋の隅で丸まっていたショコラが顔を上げてじっと見てきた。 「だけど、雨の日にパニック起こすなんてひさしぶりだよな。あの佐尾くんて子と何かあったのか?」 そう問われて、何をどこからどう説明すればいいのか迷った。 麦茶のグラスを両手で包み込んでうつむく私に、トモくんは深く突っ込んではこなかった。 「何があったのか知らないけど、お前のことすごく心配してたぞ。ケンカなら、早いとこ仲直りしろよ」 トモくんが、うつむく私の頭をぐしゃりと撫でる。 「うん……」 トモくんの話を半信半疑で聞きながら頷く。 心配ではなくて、困ってるんじゃないかな……。 佐尾くんのことを想うと、胸が鈍く傷んだ。
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