4.雨に消える慟哭

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そういえば佐尾くん、ショコラに会ったら写真を撮って見せて欲しいって言ってたな。 スクールバッグからスマホを取り出すと、足元で寛ぐショコラの姿を写真に納める。 取り乱した私を見て佐尾くんがどう思ったかはわからないけど、もし明日学校で話をするチャンスがあれば見せようと思う。迷惑をかけた、せめてものお詫びに。 「またね」 気まぐれに甘えてくるショコラをもう一度撫でると立ち上がる。 「トモくん、お邪魔しました」 奥の部屋にいるトモくんに声をかけて、玄関のドアを開ける。 学校を出たときは激しく降っていた雨が、今はもうすっかり止んでいた。 雨の匂いが混じる空気を、鼻から思いきり吸い込む。そのとき、ふと学校帰りに持っていた折り畳み傘のことを思い出した。 濡れた傘はスクールバッグには入ってなかったし、トモくんの玄関先にも置かれてない。 「トモくん、私の傘知らない?」 玄関から呼びかけたら、トモくんがのろのろと出てきた。
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