4.雨に消える慟哭

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「傘って?」 「私、持ってなかった? ピンクの折りたたみなんだけど」 「折りたたみ……? あぁ、あれか。あれなら、佐尾くんに貸したけど」 トモくんが少し考えてから、思い出したようにそう言った。 「雨降ってたし、佐尾くんのことも車で家まで送るって言ったんだけど、断られたんだよ。和紗のことが心配だから、とにかくお前を早く送ってってやってほしいって」 「え……」 トモくんの話に、胸がドクンと鳴る。 「だけど佐尾くん、傘持ってなかっただろ。びしょ濡れで帰らせるのは気がひけるから、とりあえずお前の傘を貸したんだ。明日学校で返すってさ」 「そうなんだ……」 私のピンクの折りたたみ傘をさして、ひとりで歩く佐尾くんの姿を想像してみる。 あんな、男の子には不釣り合いな傘で申し訳なかったな。 それでも佐尾くんは、私のピンクの傘を家までちゃんとさしてくれている気がする。 そう思ったら、また胸がドクンと鳴った。
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