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「傘って?」
「私、持ってなかった? ピンクの折りたたみなんだけど」
「折りたたみ……? あぁ、あれか。あれなら、佐尾くんに貸したけど」
トモくんが少し考えてから、思い出したようにそう言った。
「雨降ってたし、佐尾くんのことも車で家まで送るって言ったんだけど、断られたんだよ。和紗のことが心配だから、とにかくお前を早く送ってってやってほしいって」
「え……」
トモくんの話に、胸がドクンと鳴る。
「だけど佐尾くん、傘持ってなかっただろ。びしょ濡れで帰らせるのは気がひけるから、とりあえずお前の傘を貸したんだ。明日学校で返すってさ」
「そうなんだ……」
私のピンクの折りたたみ傘をさして、ひとりで歩く佐尾くんの姿を想像してみる。
あんな、男の子には不釣り合いな傘で申し訳なかったな。
それでも佐尾くんは、私のピンクの傘を家までちゃんとさしてくれている気がする。
そう思ったら、また胸がドクンと鳴った。
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