5.優しい雨予報

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なんとなくだけど、佐尾くんなら直接傘を返してくれるんじゃないかと思っていた。 そのときに2日前の雨の日のことを謝まりたいたと考えていたから、当てが外れて、ちょっとガッカリする。 ため息を吐きながら、ピンクの折りたたみ傘と上履きを持って立ち上がったとき、タイミングよく、佐尾くんが登校してきた。 連れ立ってる友達はいなくて、彼ひとり。話しかけるなら、今がチャンスだ。 どんなふうに声をかけるべきかと頭の中でいろいろシミュレーションしていると、下駄箱まで歩いてきた佐尾くんと目が合う。 だけど、佐尾くんと目が合った途端に私の胸はそわそわとざわつき始め、彼に話しかけるどころか、あからさまにわかるくらいにはっきりと視線を逸らしてしまった。 これで、完全に声をかけるタイミングを失ってしまった……。
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